インボイスとは?——言葉の意味とインボイス制度の定義
インボイスは、「英語」では送り状、請求書を意味するようです。
一方、「日本版インボイス」とは、難しいのですが、「適格請求書等」のことで、「適格」とは、税法に則って適格であると認められた、という意味。
「請求書等」と続くと、請求書、納品書、など、文書ジャンルは問わないが、国税庁に登録された番号が記載され、法律に則った税額、税率が記載された書面くらいの意味を示します。
税務署に登録された「適格請求書等発行業者」(登録された者は、国税庁のサイトで閲覧できます)が、発行する番号付き書面のことです。
消費税の仕組みとインボイスの役割
消費者と事業者で異なる「インボイス」の重み
消費税は、消費者にとっては、つねに課税される=納税するものなので、あまり関心が向かないかもしれません。
せいぜいインボイス番号の記載ない領収書を見ても、「購入相手は売上1千万に満たない小規模事業者なんだ、何となくあやしい!」と思う程度ですが、事業者にとってインボイスは、税金を控除するための金券みたいなもの。
現物を保存しておかないとたいへんなことになります。
消費税はどのように納められているのか
事業者にとってインボイスはどのような制度なのでしょうか?
以下、説明します。
消費税の仕組みは、売上先から、売上の一部としていただいた(いまは10%)消費税から、仕入先に支払った消費税(同じく10%)を差し引いて納めること(この差し引くことがミソになります)。
これを各段階の売買、原材料⇒製品⇒卸⇒小売り⇒消費者というなかで繰り返し、各段階が売上の消費税-仕入の消費税=差額の消費税を少しずつ納めることによって(さいごの消費者は納めるのみ)、全体の輪が完成します。
繰り返すと、最終段階にいる消費者こそ、小売店に100%支払いますが、事業者が税務署に納付するのは、各段階、少しずつ(分担して)であること。
源泉所得税とちがい、誰か特定の個人の税金を預かって、その金額のまま税務署に代納する形式ではないこと。
納める事業者にとっては、不納付になっても、特定の人間の分を納め損なったという罪悪感がない。
それゆえか、負担感が希薄である税金と言われます。
なぜインボイス制度が導入されたのか
「帳簿控除方式」だった日本の消費税制度
さて、我が国の消費税は、制度発足当初、広く薄く、簡素な制度を旨としていました。
控除する消費税も、自分の帳簿に記載があればそれで良し、としていました。(これを帳簿控除方式といいます。)
諸外国では、納税者の帳簿記載ひとつで、税金控除がてきること自体、危うげな制度と思われていましたが、たいへん税収が上がったので、逆にうらやましがられ、後発国など日本の制度を見習ううごきがあった、と聞いています。
税率上昇と無申告リスクへの懸念
しかしながら、税率が5%⇒8%⇒10%と実際上がってきて、将来的に、ひょっとしたら? 15%⇒20%⇒25%と上がるかもしれない?? ことを考えてみてください。
上記消費税の輪のなかで、もし、納税しない無責任な輩が出てくると、たいへんなことになります。
いまでも、仕入先より請求書10%と表示され、その記載のとおり信用して支払ったところ、その業者が税務署に納めていなかったらどうでしょう。
国が10%損をして、悪徳な輩が、本来プラス上乗せの税金分10%まるまる得をする(悪徳業者にも課税仕入れはあるので、そんな得にはならないのですが)ことになります。
これがもし25%にも上がったら?
アンダーグラウンド経済(世界)の醸成に、消費税がアシストすることにつながりかねません。
実際、経済危機下の国々は、そうだったのでは? と思っています。。
インボイスの仕組み——仕入税額控除ができる理由
そこでインボイスの登場です。
インボイスがあれば、いちおう相手が、税務署に納める義務のある業者(適格請求書等発行業者)と分かるので、領収書に記載された金額は納税されているだろう、と解釈できる。
だからこそ、その金額を正々堂々、差し引くこと(仕入税額控除といいます)ができる。
逆にいえば、インボイスがなければ差し引くこと(仕入控除)ができない。
このようなロジックの流れになります。
それゆえ、インボイスは金券と同じなのです。
免税事業者への影響と実務上の負担
年間売上1000万円以下の事業者が直面する課題
インボイス制度は、多少不便で窮屈かもしれません。
制度発足前、インボイス登録をしなくても許される免税業者は、一連の取引から除外され、しごとがなくなるのでは、との懸念がありました。
年間売上1000万円以下の零細業者は、免税業者になるかわり、インボイスを発行できない⇒取引業者にとっては、仕入れ税額控除ができない⇒取引業者が消費税分をまるまるかぶる⇒であれば同レベルの業者ならば、登録業者との取引を選択する⇒結果、1000万以下の免税業者は取引の輪から、はじき出される。
このような理屈です。
軽減措置と経理現場の負担
それゆえ、年間売上1000万以下でも、わざわざインボイス登録に手を挙げる業者には(ということは消費税を納税するということなのですが)、消費税の軽減措置が用意してあります。
制度発足から3年たったいま、それなりに登録した免税業者も増えてきました。
そもそも論として、免税業者は国庫に税金を納めていないのですから、取引先が帳簿のうえで、仕入税額控除することはおかしいし、国はそれだけ損をしていたわけです。
かといって、小規模事業者にできない(であろう)煩雑な事務負担を強いるのもどうか、と思います。
付け加えて、実務のうえから申し上げれば、インボイス制度の導入は、経理担当者にとって、仕訳時の会計処理の入力項目が増えてたいへんです。
「Tではじまる13ケタの数字」を入力するだけでも、年配者には目が疲れ、つらい作業です。
インボイス制度は消費税を守るために必要——今後の課題
消費税は、国の税収ランキングでは、年によって占める割合に違いはありますが、常にトップであることには変わりありません。
基幹税の中心としてゆるぎない地位を占め、まちがいなく国家運営に貢献しています。
その基幹税を守るためにも、インボイス制度は必要なことだと考えます。
ただし万能ではないし、完全な制度でもありません。
消費税は納税者側に負担感が薄い分、責任感も薄く、それを維持する高い租税モラルが必要ではないでしょうか。
これを維持するには、まず、税率をいじりすぎないこと、特例を設けないこと、大衆に迎合しないこと、が必要です。
昨今の政治をみていると、これらがどうもあやしく見えてしまいます。
租税モラル崩壊につながらなければよいのですが。