石坂税務会計事務所

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経済がよくなるとは?

経営者アンケートによると、平成29年度の日本の景気予測は、「良くなる」がほとんど、「現状維持」が少々、「悪くなる」はゼロだという。
ちょっと信じられない。28年末のトランプ・ショックによる円安、株価上昇を反映してか、強気なのは分かるが。
そもそも論として企業業績が良くなっているのは、なぜか?
賃金が抑えられ、設備投資が抑えられているからではないのか。
円安という外的要因も大きい。
政府のインフレ策の効き目などあったのかどうか?

トランプは米国の自動車メーカーがメキシコに移転することを力づくで阻止しようと躍起だ。トヨタにも自己のツイッターでクレームをつけたという。
ものの価値とは何か? マルクス経済学ではその根源を人間の労働力に求める。それが正しいかは分からないが、物を産み出すには、汗をかかなければダメだと思う。
金融からは何にも産まれない。その面をトランプはよく分かっている。トランプはクレージーかも知れないが、ただのはったり不動産屋ではないかも知れない。

日本社会は安定している。殺人事件は年間1,000人を切り、交通事故死者も4,000人を割った。それが世界的にいかに稀有なことか。
われわれはその利益を享受しているのだ。実感はないが。

経済はどうだろう。
お金は回っているか?
いまの日本にいちばん欠けているのは汗をかくことではないか?
過剰労働を恐れるあまり、社会が萎縮しているのも気になるところだ。
ある大手企業の社員は、外出には、GPS付き携帯の着用義務が・・・。24時間連絡が途絶えることがないように→24時間監視されているとも言える。
自動車による営業活動も、車のブレーキをちょっと大きく踏むと、すぐに本部に通報され、危険運転者として認定されるしくみに。結果、車を使わない社員が増えている。環境にはやさしいだろうが・・・。
勝手に自用パソコンを使ったりはできないうえ、持ち出しには禁止、アクセスのログが必ず残る。残業を抑えるため、夜8時になると自動的にサーバーと切断される。パソコンなしでは、しごとを持っては帰れない。
大きな設備投資も消極的だ。
技術革新の絶えざる変化により、現在の設備もすぐに老朽化し、その投資に見合う回収が、なかなかできないため、及び腰となっている。実際、無理な投資をした会社が失敗する。
建物、機械のメインテナンスにも多額のランニング・コストがかかるような社会構造になってしまっている。コンピューター設備が複雑化し、製造元派遣の専門家でなければ直せない。必ずしも必要でない、付帯的なサービスが多すぎるとは感じるが、それがどれかも分からない。
では企業買収は? 海外投資は?
東芝をみるように、海外投資はリスクが大きすぎる。というか、東芝ですら引っかかったというべきか。法律、社会環境、教育度。その違いを埋める作業は容易ではない。
会計的には、内部留保が溜まり、企業財政の健全化は促進されたが、溜めるだけではお金は回らず、経済が活性化しない。
同じ考えなら、国の財政だって健全化しそうなものだ。ところがそうではない。国だけは赤字国債を発行しても、経済を活性化し、お金を回せという。公共心が欠如し、国家を建て直そうという思考に欠けるからだ。

日本経済にいちばん欠けていること。
事業意欲。冒険心。ヴァイタリティ。汗をかいて物を産み出すというあたりまえの作業。
それがなければ付加価値は産み出せない。
付加価値とは前段階からうけとったものを、社内で加工し、新たな価値を見出し、次の段階に渡すこと。
高い付加価値を維持する。それには、同業他社より、たくさんの汗をかかなければ。

経済が良くなるには。
それは今も昔も変わらない。
新たな価値を生み出す、たくさんの労働が必要と思う。