石坂税務会計事務所

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消費税を再考しよう

平成26年4月より消費税が8%になった
その前後で、5%か8%かの珍妙さが、いろいろニュースに取り上げられた。
いわく、A社の携帯は3月31日を過ぎても、通話が終わるまでは5%だが、B社、C社は12時を1秒でも過ぎれば通話中でも8%となる。
いわく、31日に出庫したタクシーは会社に帰るまでは8%だが、日を跨いで1日深夜に出庫したタクシーは8%だ。
いわく、コンビニではレジに並んでも、31日12時ジャストまでに通過しなければ8%だ。 それぞれ正しいのだが、どうも理屈が明確にされないまま、ちぐはぐにみえる現象のおもしろさのみピックアップされてしまった。
また、1日、2日の宅配業者は現実大混乱していた。時間指定便は時間どおりに着かないと連絡があった。ネット・ショッピング業者が31日12時まで配送できれば運賃5%だとあおり、ユーザーからとてつもなく大量の発注があったからだ。
4月から大手スーパーや外食チェーンは、そのほとんどが税抜き表示方式を採用(時限立法で許されていた)したこともあって、ちょっと前との比較も困難になっている。 前回3%から5%へのアップ時には、国税が弾力的運用を宣伝したこともあり、今回のようなことはなかったように記憶する。

このたびは得意先からもいろいろ質問された。 その多くは4月支払時でも5%でほんとうによいかということだ。

ポイントは、売上・仕入の時点はどこか? ということである。
それは通常商品売買であれば、引渡しの時点。細かくいえば、相手先がその場で検収し、OKを出した時点、機械であれば試運転、動作をテスト確認し、OKした時点である。労務の提供、サービスであれば、その役務が完了した時点になるだろう。
逆に、売上として相手に請求できる時点はどこか(これ以前はダメで、これ以降であれば請求できる時点)といったほうが分かりやすい。
あまり複雑に考えなくてよい。また、業種が同じなら通常、みな同じはずだ。 ガスや電気のように、検針をしてはじめて使用量(売上)が分かるような業種は、3月31日12時の瞬間に、すべての家庭に検針員を派遣するわけにはいかない。物量的に無理なので、次月の検診分より8%になる経過措置がある。
決して支払い時点ではないのだ。

消費税を負担するのは原則、転嫁のサイクルの最終にいる消費者である。
だから中間にいる事業者は、すべて転嫁できていれば理論上は、損得はない。5%で仕入した商品を4月以降、8%で売上しても、差額の3%も国庫へ行ってしまうので、差引、業者には損得はない勘定になる。
3月中にパソコンを大量購入したとしても、消費者でなければ損得はなかったはずだ。

では、極端にいえばこれがヨーロッパ並みの15%から25%になってもほんとうに損得はないか? といえばそうではないと思う。消費税は売上から仕入を引いた付加価値に係る税金で、受け取った消費税から支払った消費税を引いて納めてよいといっても、タイムラグがあり、その間うまく資金繰りが回るかは、税率が高く、納税額が多いほどリスクを伴う。
消費者の購買活動が鈍化し、消費を控えるようになれぱ、物が売れなくなる。世の中全体の景気が悪くなる。直接間接にしろ、国内企業はこの日本経済からは逃れ得ない。

国税側にとってはどうだろう。
消費税は少ないコストで多額の税収を得る夢のような税目だ。何しろ膨大な納税者を相手にする所得税とちがい、国民全体よりは数少ない課税事業者のみ相手にして、納税に気を配ればよい。税務職員の員数も少なくて済む。
所得税や法人税など納税者から直接徴収する直接税は、その懐にストレートに響くため反対が多く、税率を上げるのはたいへんだ。だが、消費税のような間接税は直接響くわけではなく、納税の負担感に乏しいとされるので、反対が少なくて済むという。いわば「とりやすい」税なのだ。

日本の消費税はたいへんうまく行っていて、低い税率のわりには税収が多いという。 ヨーロッパなどは、税率は高いが、税収はさほどあがっていない。高くなればなるほど、脱漏が出てくるからだ。いまはむしろ、日本を見習って、低くて簡素、単一の税率にしようとの議論があると聞いた。
要は、消費税は事業者がきちんと納税するものという前提に立ってのこと(これはどの税も言えるのだが)。税率が高くなればこのモラルの維持がたいへんなのだ。5%が10%になると、税収が倍になるかといえば、そうはならないだろう。
事業者の事業そのものの資金繰りが悪化すれば、消費税の納税資金を流用されることもあり得る。どこからも資金が借りられないような事業者ならば、なおさら「ねこに鰹節」である。高額な社会保険料を回収できなくなり、「消えた年金」問題があらわれ、制度そのものが崩壊しかかって、解体した社会保険事務所のようなことが、国税当局に起こらないとも限らない。

また、消費税率アップが原因で日本経済の健全性が損なわれかねないことも重要だ。今回、国税が気にしていたのは、消費税アップを契機に、転嫁させない下請けいじめがないかどうか。悪質な下請切りがないかどうかだった。

法人税率や所得税率が周辺国より高いという理由で、優良な納税者が逃げていくことに歯止めをかけるには、各国並みに法人税率を下げ、その分消費税率を各国並みに上げるべき、という理屈は分かる。
日本の国家が、莫大な国債を発行し、常識では到底返せない膨大な借金があるわりには、円の信用が下がらないのは、諸外国にくらべればまだ消費税が低率で、アップの余地があるからだといわれる。
だが、この消費税の税率アップこそは、社会全体が重くなる、何か禁じ手のように思えてならない。
現代は日本単独の税制で考えるだけでなく、周辺国家、世界の税制とのバランスという観点を考慮しなければならず、でなければ優良企業亡国の税制ではないかとさえ思う。
かといって、税収をあげ、国家財政を健全化に近づけることができる、よりベターな手段がこれ以外にあるとも思えない。
うまく消費税率を上げつつ、納税モラルを維持し、社会を活性化させる以外には・・・