石坂税務会計事務所

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消費税増税と納税モラル

いよいよ平成26年4月から消費税が8%に、おなじく平成27年10月から10%に税率アップとなる。
あまり話題にならないのが不思議なのだが、日本の消費税はたいへんうまくいっていて、税率こそ低いが、金額ベースでは徴収額が非常に高い。こんなにうまくいっているのは世界じゅうでも、日本とデンマークぐらいだそうだ。
消費税の本家、ヨーロッパの国々からみても、日本のように、やはり低い税率設定、単一税率のほうがいいのではないかと、垂涎の目でみられ、そちらの方向に改正できないかと、真剣に議論されているようだ。

ただし、日本が10%になったとき、単純に税収が倍増するかは疑問! 必ず脱漏が出てくる。
経済危機のギリシャでは、国民がきちんと消費税を納めれば、国家財政は単年度黒字になる計算だそうで、そうはならないのが、多くの国の現状である。
日本でも10%に上がったとき、いままでどおりの高い水準の納税モラルを維持できるだろうか?

日本の中小企業の財政回復はまだまだで、その基盤が弱い事業体は数多い。もし、事業が傾き、資金的に行き詰まり、事業資金を金融機関より借り入れできなければ、当然ながら、多くの場合は、消費税用に取っておいた資金に手を付けざるを得ない。そこに潤沢な資金があるのだから。悪いこととは知りながら、客先、仕入先、従業員に迷惑をかけるわけにはいかず、要は優先順位の問題である。

消費税はその会計的性格は、「預り金」ではない。売上なり、仕入なりの一部を構成する要素にすぎない。
国税庁は絶対「預り金」とは言わない。「預り金的性格のもの」という表現をする。源泉のように、従業員だれそれの源泉所得税をいくら預っていると表わせず、その金額は個別に算出できないからだ。

せめて、消費税借入についてはその会社の借入限度がいっぱいであっても、例外的に国が保証する制度をつくるようなことをしないと。
まず、国家が保証し、金融機関より直接納税する。企業は返済能力に応じ、金融機関に毎月借入を返済する。たとえ途中で、倒産などで支払えなくなっても、金融機関にはリスクはなく、国としても、いくばくかでも回収できれば、御の字ではないか。

マイナンバー制度も始まる。
デンマークでは、月に約5万以上の給与を支払う事業主は、雇用時にその従業員のマイナンバーを国税庁に通報する義務を負う。また、年末に、金融機関は、支店にある預金者の預金残高を、マイナンバーとともに、国税庁に提出するそうだ。
まさにガラス張り社会。そうでもしないと、納税水準は保てないからだろう。 プライバシー(個人情報)とのかねあいだが、この制度は絶対必要だとの社会的コンセンサスができているからだ。
北欧へいくと、この地域に、どういう嗜好を持つ者が何人いる、そういった情報を、公共機関自身が、一件いくらで需要のある私的企業に売る。まさに個人情報の売買だが、それはプライバシーではないのだというコンセンサスがあるのだそうだ。

それにしても10%は重い。これを機に、日本の納税モラルが大幅に低下することを危惧するものである。